殿
坂下 本殿前の坂
まず、この坂の上にぼんでんを立てなければならない。
呼吸を整え、力を合わせて登るのだ。
我が会では責任者がぼんでんを持ち、回りを囲んだ仲間に腰を後ろから押し上げてもらい登るのだ。
かなりの急坂なので、一人で最後まで倒さずに持って行くのは大変なことだが、ここは責任者男としての見せ場であろう。
一気に登りきり,ぼんでんを立てなければと、自然と気合いが入る。
皆で声をかけ合い、力を合わせ足場の悪い所を何とかぼんでんを倒さずに登る。
力自慢の若い衆が一人で!
いよいよ奉納だ。
本殿は既にすごい状況になっている。
奉納の済んだ若衆や他のぼんでんの奉納を阻止しようとする者達が、本殿いっぱいには入りもみ合っている。
もう湯気が上がっている。
まず、制札が入る。制札には皆手は出さず通す。
すぐに隙間はなくなり階段の上まで、若衆で埋まる。
そこに一本のぼんでんが頭から突っ込む。 が、しかし単純に行ったのでは簡単に弾き返され戻されてしまう。
それなりのテクニックもいるのだ。
第一に本殿は階段を5段ばかり上がることになる、長い竿のぼんでんである、同じ角度のまま段を上がっていったら上につかえる事になる。
だからそれなりのやり方がある。 上からの力勢いに対してや、頭を下げ竿の高さを加減する事や、後はタイミング。
いよいよ自分達の番だ。 まず制札が、神さんに挨拶だ。
これから自分達が奉納するぞと、制札を本殿の柱や鴨居に打ちつけ、そして本殿を通す。
態勢の整ったぼんでんが3本,本殿勢の挑発や勢いのタイミングを外すように、まず1本目が突っ込む。
いくら勢いをつけていっても,間違いなく押し戻される。
だが押し戻す際に勢い余って中の人間も一緒に出てくる。
中の圧力が少しでも弱まるその時に、もう一度行くか,他のぼんでんが突っ込み揺さぶりを掛けることで、中の力を分散させる。
そこに、次々と重なるように突っ込む。徐々にぼんでんが入って行く。

中の勢力も前に押し戻すほどの力はないものの、抜け出すにはかなりの圧力に抵抗しなければならない。
しかし,勢いさえつけば本殿の床には段差があるので、足下を取られ押されだすと中の力も揺らぐ、そこを一気に抜け出し、本殿を通り抜け、ぼんでんを立てるのだ。
こうして、40本前後のすべてのぼんでんが、それぞれにドラマを作り上げる。
そして山を降り、社務所にぼんでんのさがり等の布と制札を収め、お札を受けて町内に 戻る。 朝冷えて凍った道も、奉納を終えて戻るころには決まって緩み、春を迎える時が近いことを感じる。

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