横手の送り盆
蛇の崎橋に集結 先を競り合う
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その分、集結場所(蛇の崎橋のたもと)には、早い時間に舟が集まってくる。
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開放時間にならなければ、橋へは入れない。
若い衆が大勢集まった町内は、他が先着順に並んでいても、おかまい無しに追い越しにかかる。 当然トラブル、掴み合い、小突き合いが起きるのは当たり前、それこそ序章である。
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昔からのしきたり通り、祭りの発祥の町内といわれる伝統町内が、先頭で橋を渡るべく当然のように、後から全てを追い越して先頭に出ようとする。
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他の伝統町内にも、しきたりを重んずる派と、それを認めないものとがあり、もう開放時間前から緊張感が走り気合が燃え上がる。
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先祖の霊を慰める読経が、市内の僧侶達によって行われ終わると、すべてのサイサイが猛然と打ち鳴らす。
いよいよ始まりだ。
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それぞれの舟の船頭(拍子木(通称「タンコ」)を打ち鳴らして、指示を出す。)が、準備体制を整え、合図を待つ。
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送り盆祭りの実行委員等によって、橋への進入開放の合図がなされると、いっせいに「タンコ」(拍子木の事)が打ち鳴らされ一気に動き出す。
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この最初の突っ込み方で、先頭から5 艘位の位置取りが決ってしまうものだから、皆必死だ。
完全に先頭を取れそうな舟は担いで、その他の舟は担木に着けられた引綱を引っ張って動かす。
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地面には予め砂が撒かれ、摩擦による道路の痛みに備えている。
橋に入る時には舟と舟の間が狭くなり人が居られなくなる様な状態だ。 それでも橋に入り完全に進行方向に舳先を向け、他の舟に割り込まれない体勢が取れるまでは必死で争う。
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密着状態になる為、担木や横木が重なり合い、かみ合った状態になり、単独では動きが取れなくなり、船頭達乗り役が、自分達の優位性を主張したりのやり取りで、徐々に順番が決っていく。
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ほっと一息つける様になり気がつくと、橋の半ばまで来ており、空には色鮮やかな花火が打ち上げられ、サイサイも、他町に負けじと打ち鳴らして志気を高める。
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行きの順位付けが、大方ついた頃には、先頭の舟が川原に向かって橋から堤防、そして送り盆の為に作られた、特設の坂へと進んでゆく。
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今までの荒々しさが静まり、タンコが鳴ると舟を担ぎ上げる掛け声「セーノ」、歩調を合わせる為の「ワッショイ」、そして舟の軋む音。
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舟の動きで裸蝋燭が揺れる。此れを離れた所から見ると美しいのだ。
近くで見たら単に木材と藁の舟だが、暗闇には裸蝋燭の舟は映えるのだ。 風になびく七夕飾りもぼんやりとした明かりの灯ろうも実に良いのだ。
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すべての舟が川原に降りるまでは、先に降りて待っていた子供たちが、舟を取り囲み花火を楽しんだり、じ蝋燭の解けてたっているのを、採って丸めて大きな特製のろうそくを作って遊んだり、昔と変わらない。
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大人達はつかの間の休息、ビールで水分補給、おにぎりを食べたりしながら、空の花火を楽しみながら、一方ではあと何 艘で全てが降りきるのか、他町の動きはどうか、気を配る。
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あと2 艘、子供たち観光客は、舟から遠ざけられ、男達は身構える。
緊張感がまた走る。
つづく
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